最高裁判所第二小法廷 昭和54年(行ツ)72号 判決 1980年2月08日
神戸市兵庫区上沢通一丁目三番三号
上告人
樫本定雄
神戸市兵庫区水木通二丁目一番四号
被上告人
兵庫税務署長
福山寛
右指定代理人
小林孝雄
右当事者官の大阪高等裁判所昭和五三年(行コ)第三九号所得税賦課決定処分取消請求事件について、同裁判所が昭和五四年二月二七日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由について
本件訴を不適法とした原審の判断は、正当であって、原判決に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に基づいて原判決を論難するものか、又は、原審が本案についての上告人の主張を採用しないことの不当をいうものにすぎず、採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 監野宜慶 裁判官 栗本一夫 裁判官 木下忠良 裁判官 塚本重頼)
(昭和五四年(行ツ)第七二号 上告人 樫本定雄)
上告人の上告理由書記載の上告理由
上告理由第一点
国税通則法一一五条一項第三号の但書所定の控訴人の主張がないと判断したのは誤りである即ち、控訴人が本件賦課決定処分に就いて裁判を経ること要しないのは別紙審査請求に関する証明書に示す通り1、審査請求年月日昭和四八年五月一四日2、原処分昭和四四年分所得税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分並に昭和四五、同四六年各年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分3、裁判終了年月日昭和四九年四月二四日4、裁決書謄本送達昭和四九年五月一七日であったのに第一審裁判所は一ケ年以上を異議決定後一ケ年を経過せるの故を以って審査の遅延が審判所にあるのを見のがして敗訴に控訴人がせられたにがい経験があるので審査請求をしないことにつき正当な理由があるので第二審に於いて其主張をなし裁判官はその事につき加味して判断をすると口頭弁論において宣告しながら国税通則法第一一五条第一項第三号但書の正当の理由の有無を審理し判決理由に理由を明にしていない違法がある。
右につき一審においてそれは過去にかかることと本件とは別であるが如く判定したのは審理不尽である。
上告理由第二点
国税通則第一一五条第一項但書第三号及び国税徴収四八条第二項に違反する判決である。
国税に関する法律に基く処分についてされた異議申立又は審査請求についての裁決を経ることにより生ずる蓄しい損害を避けるため緊急の必要がある時は裁判所に直接訴を提起することができると規定されているのにかゝわらず二審判決理由書には所有不動産について本件賦課決定処分された税金滞納による差押処分を受けていることだけでは審査請求についての裁決を経ることによって著しい損害を生ずる場合に当らないと判決しているが昭和五四年二月一日付口頭弁論再開申立理由書に於いて陳述せるとおり差押処分について異議申立てたる処(昭和五一年九月八日付提出された昭和五一年九月四日付不動産仮差押処分)棄却却下された然し昭和五四年二月七日付口頭弁論再開申立書に国税徴収法四八条を考慮して差押えたと称する同条第二項には差押できる財産の価格「甲七号証の一より一四号迄」三一一万八六八七円であり其他片岡サワ債権一二〇〇万円滞納税金三〇〇〇万円に対する及右所得税以外の他地方附加税合計額を越える見込みない時は差押えることができない時は差押してはならないと法定されているのに違反するのである事は財産評価額三一一万八六七円であることから明である然る処片岡サワは差押財産の(仮登記権利)を放棄し私製証書甲一五号証<1><2>により請求されている事は明なのであるのに此事は国税通則法一一五条第一項第三項但書の裁決を経ることにより生ずる著しき損害を避ける為緊急の必要ありと主張立証せるに是を審理せざるは国税徴収法四八条第二項に違反する差押である。
上告理由第三点
共有財産を処分し分配したるに上告人只一人に課税徴収せんとする租税公平原則に違反するので正当な理由がある
口頭弁論再開の申立「昭和五四年二月一日付」理由証拠(甲二号証委任状)及甲三号証売渡証書に明なるとおり本件課税の物件は樫本イサヲ、三俣よしゑ、浜田一枝の三人の共有であり甲四号証売買依頼書甲五号証(三俣、浜田両人分配金額)一三五〇万円樫本イサヲ四五〇〇万円残り樫本造成費一八五六万二三二七円に対(樫本の収入金額税務署認める七二四四万三二五五円であって是だけでも樫本は四六一万七四五円の損失である然るに税務署は樫本定雄の個人所得として課税したのは公平課税原則誤りである。
(添付書類省略)
上告人の上告理由補充申立書記載の上告理由
上告理由第三点として共有財産を処分したのに対する。即ち神戸市兵庫区山田町原野字数ノ奥山一ノ二〇番及二一番の土地を分筆して樫本定雄、樫本イサオ、三俣よしゑ、浜田一枝が(売却処分)して所得したのが本件の賦課決定の大部分であることが明瞭な事実であることは異議申立てに対する決定から明瞭である然るに国税通則法第一条には税務行政の公正な運営を図りもって国民の納税義務の適正かつ円滑な履行に資することを目的とすると制定せるにかゝわらず本件不動産を販売するには田島山林溜池を含まれていたので是を販売するには地図を原野に統一し然る後分筆しなければ宅地造成して販売する事が不可能なので樫本定雄造成を委任を受けやったので造成費も認めて居るに所得金額も夫々分配した証拠あるのに樫本定雄個人に綜合賦課決定したのは右国税通則法第一条に違反するので特に補充して上告理由とする
補充第二点は国税通則法第一一五条第一項第三号異議申立についての決定又は審査についての裁決を経ることにより生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要ある時に該当しないとして又延滞税がかさむとの点は裁決で取消れるなれば賦課されないとしているが国税徴収法四八号第二項で差押できる財産の価額が滞納処分費徴収すべき国税地方税数ノ奥山に壱千弐百万円の抵当権仮登記を設定しありしを差押されたので評価の三倍以上を支払えとなり困ったのでその他の債権(片岡サワの仮登記)の合計額を超える見込ないことは上告理由第二点のとおりであるのに差押したのは同法違反の判決である以上補充する。
以上